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医学部受験のための共通テスト分析2021・化学

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先日行われた共通テストについて、医学部受験生を対象に、問題をチェックしていきます。
今回は化学。全体の傾向として、やや難化しています。文章が長い問題や、思考力を問う問題文がいくつかみられました。
  
予備校や出版社などが出している共通テスト講評などは、一般の受験生を対象にしているので、医学部受験者の状況には合っていない事があります。たとえば問題の難易度については、予備校などの講評では「教科書に掲載されていない物質が題材となっている」「溶液の濃度の変化を考慮して計算をしなければならない」などという理由で、「難しい」とされることがあります。
しかし、私大や国立2次を照準において学習を進めている医学部受験生は、その程度の理由で共通テスト問題を難しいとは感じないでしょう。むしろ、難しいと思うのは、私大や国立2次と傾向が異なるようなタイプの問題が共通テストで出題されたときであるというのが実感なのではないかと思います。

第1問問4 蒸気圧が絡むときのPT図。PV図とあわせて、医学部受験生のレベルであれば絶対に見慣れておきたい問題です。重要問題集などにも当然掲載されています。
aは「温度一定(90℃)で、1.0×10〔Pa〕のCOHの体積を5倍にした」とあるので、直ちに圧力が5分の1になるな、と判断したいところです。なお、問題のグラフ(図1)の温度目盛りは2℃刻みなので、読み取りに気を付けたいところです。



bは、状態方程式によるグラフと蒸気圧曲線の、低い方をなぞる問題。それぞれのグラフの意味がわかっているかがわかるいい問題です。直線のグラフは2本あります。圧力の数値を状態方程式から求めるのですが、式に100℃を代入してGかEかを求めてもいいですが、式に27℃(=300K)を代入して圧力が0.3か0.6かを考えてもいいでしょう。
 
第2問問3 エネルギー図に加熱・冷却が書き加えられている問題。通常は、エネルギー図でいうエネルギーは化学エネルギーを意味するので、温度変化によって上下しません(時々誤解されていることがあるのですが、気体のほうが固体よりもエネルギーが大きいというのは、温度が高いという意味ではないです。同じ温度でも、気体に変えるときに結合をふりほどくための仕事が必要で、その仕事が気体にエネルギーとして蓄えられているとみなしているのです)。



そこで、昇華を考えるときにこの温度変化をキャンセルしてしまう(加熱して冷却しているから)と、間違いになります。水を加熱してから水蒸気を冷却して温度を元に戻すのですが、液体と気体では比熱が違うので、差し引きして考える必要があります。

第3問問3 鉄のシュウ酸錯イオン(オキサラト錯体)の光還元反応。ほぼ初見の反応です。昔の「青写真」の原理なんです。
共通テストでは、見慣れない物質や反応を入れてきます。その時に、「教科書の中のどの話なのか」と考えて進めるようにしたいです。もちろん、錯イオンの基礎知識と解離率計算知識は必須です。

第5問問2 センター試験と異なり、共通テストでは理科の「選択問題」がありません。高分子から逃げられないようになっています。



グルコースにメタノールを脱水縮合させたエーテル。これが水中で開環できないことに気づくかがポイントです。グルコースの開環というのは、1位の炭素原子に結合しているヒドロキシ基がカルボニル基に変わることで起こりますが、問題の物質はそのヒドロキシ基がエーテル結合に使われているために、カルボニル基に変わることができず、よって開環しない、ということになります。

それでは、対策です。
化学についてはまず、私大対策演習が共通テスト対策に直結します。
今年について予備校が共通して「思考力が要求されたため難化した」と講評していますが、いいかえると、私大医学部の問題に近づいたという見方ができます。医学部受験生にとって、この傾向はありがたいはずです。直前期に特別な勉強に時間を割く必要がないわけですから。
短時間で多くの単発マーク問題を出す大学の過去問を、どんどん練習していくといいでしょう。
そのうえで、時間配分や特有のヒネリ方などに慣れるためには、共通テストの過去問を、時間を強く意識して解くとよいでしょう。時間を意識することが大切で、「時間をかけすぎて出した正解に意味はない、むしろ他の問題を解く時間を奪っているので有害」くらいの気持ちを持って取り組むことです。
そうすると自然と、覚えるべき反応式や分子量数値、計算公式などが見えてくると思います。
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