前回にひきつづき、医学部受験生にとってのセンター試験。
今回は地理についてです。今年はやや難化。その前が易しかったので、
普通に戻ったという感じかもしれません。
地理では、図表からテーマを読み取りにくい問題や、細かすぎる知識問題が、点を落とす原因です。今回はそういう問題が少なく、医学部受験生も取り組みやすかったのではないかと感じます。
第1問問3 会話文補充。パズルっぽい感じの問題です。災害の原因を「災害のきっかけ」(自然現象そのもの)と「災害に対する弱さ」(被害を拡大する人為的要因)に分けたうえで、「タイの洪水についていえば、タイの雨季に降水量が多かった事例と( )事例とで周辺の気圧配置や気流などを比較すると、タイでの「災害のきっかけ」を考えるヒントが得られそうだよ」という文章の( )に入る文を選択させます。選択肢は「雨季に降水量が少なかった」と「乾季に降水量が多かった」。
2つの事例を雨季で揃えるか、降水量が多かったで揃えるか。雨季と乾季では気圧配置が異なるので、異なる時季の気圧を比較しても、異なるのは当然なので意味がないです。言い換えると、雨季に雨が降る仕組みと乾季に雨が降る仕組みが異なるので、比較して物を言うことができないです。
第1問問4 条件に該当する山の数を答えさせる問題。変動帯を正確に押さえられているかどうか(オーストラリア大陸に変動帯は存在しない)、山岳氷河についての考察ができるか(降雪が必要。赤道直下の5800メートルで雪が降るなら、他地域の6000メートル以上の山岳には降雪の可能性が高い。一方、オーストラリアは降雪が少ない)。
この手の考察をスムーズに行うためには、知識を正確に押さえている必要があります。知識に自信がなければ、「自分が知らない何らかの知識事項を使って考えるのかな?」と考えてしまって、失敗します。
また、
余計なことを知っていることも、失敗の理由となります。大学レベルの文献を読むと、「高校の教科書・参考書の知識は不十分・不正確だ」といわんばかりに色々なことが載っています。(化学とか生物とかの、大学の教科書を思い浮かべると、感じがわかるでしょう)。
高校社会科教科書の相場を知らない大人が思いつく内容や、ネットで調べた内容などに、こういう知識が入っていることが多いです。これが、
医学部受験生の敵なんです。こういうものは、ただ詳しすぎるというだけでなく、物の見方や角度、用語の定義、例外事象の扱いなどが微妙に違うんです。
化学などの科目だとそういうことは少ないです。受験学習でwikipediaで用語を調べるようなことはあまりないはずです(受験で求められているものと異なる、ということが、読めばはっきりわかる)。ところが社会科だと、やってしまう。理由は
、高校社会科に詳しい人が医学部予備校には少ない一方、教養知識としての社会に詳しい人は多いからです。
第3問問1 世界の重要都市については、大体の位置を掴んでいると思いますが、「人口100万人以上の都市」となると難しいです。日本は12市(東京23区で1つとする)ありますが、インドで50個、中国で100個近く、パキスタンで10、ブラジルで20近くありますので、全部の位置を覚えるのは無理です。
ウの中国が都市数が最多の④、というのはわかりますが、他は難しいかもしれません。ブラジルが海岸線の形から②っぽく、アフリカは都市数は少なそう、パキスタンは人口が多いから③かな、という感じの推測で答えることになるでしょう。
この問題とは別に、大都市のおよその位置(海沿いかどうか、など)と位置関係(どちらが北か)は知っておきたいところです。
第3問問2 グラフ考察問題は、「たまたまそういうグラフになった」ものを扱うことはまずなく、テーマを与えたグラフからそのテーマを読み取る問題となります。人口や年齢と関連すると、オーストラリアでは白豪主義を撤廃して移民受け入れが行われていること、韓国が日本と同じ高齢化社会を迎えていること、ケニアは農業途上国として選ばれて出題されていることに着目します。そのうえで人口第1位都市は産業が発達しているので生産年齢人口が多いのではないか、と推測すれば大丈夫です。
推測のためにある程度の知識が必要な問題です。
対策について。
まず中学入試・高校入試の感覚で勉強できる部分は、落としたくないところです。特に理系受験生は、記述問題対策などはしないわけですから、地図帳や図表はジックリながめておきたいところです。理系科目計算問題を解く合間に頭を休める感じでいいでしょう。「意外とメキシコががんばってるな」「中国ロシアで世界シェア50%」みたいなことを見つけながら読み進めていくとよいでしょう。
そして「最低限の歴史・公民の知識は持っておく」「宗教や交通の知識は少し深く用意しておく」こと。特に、近現代史は要注意です。