前回にひきつづき、医学部受験生にとってのセンター試験。
今回は日本史についてです。日本史については昨年までは、ここでは書かなかったのですが、時々医学部受験生が選択することがあるので、今年は取り上げてみました。
社会科のなかでは日本史は、必要な知識量が多いという特徴があります。要するに、覚えるべき分量が多い。そのため、
理系受験生にはあまりお勧めできない科目です。ただ、学習方法が明確であり、また試験範囲が明確なので対策が立てやすいというメリットもあるので、確実に9割取りたいというのであれば、日本史は確実な科目です。ただ、医学部受験生であれば、共通テスト社会で10点や20点稼ぐよりも、数学や理科のほうが優先順位が高いです。
第2問問1中国王朝の領域に関する問題。「日本史」ではないから難しいかもしれないが、キッチリ正解したいところ。
1世紀、3世紀、5世紀だから、後漢(後漢書東夷伝)、魏(魏志倭人伝)=三国時代、宋(宋書倭国伝)=南北朝時代。なお当然、宋は後の時代の宋(日宋貿易)ではなく、華南4朝(宋斉梁陳)の宋。全ての王朝を覚える必要はないが、隣国の時代名くらいは把握しておきたい。
第2問問3知識を使った考察問題。考察部分は素直なので、正確に知識を身に着けたい。文章aとbは問題文からの推測で解けるが、cとdは年代を押さえておく必要がある。
a「古い時代の中国における漢字文化の影響は見られない」とあるが、本文では「同時代の中国では既に使われなくなった漢字音の使用が見られる」とある。中国で漢字の音が変化したが、その漢字の音を古くに受け継いでいた日本で、中国の変化前の漢字の音が残っているということ。
b「椋」という字の意味が、中国と日本で異なり、朝鮮と日本で共通している、という点から、朝鮮諸国の漢字文化の影響を日本が受けている、という話。
c吉備真備は、藤原仲麻呂の乱に関係する学者政治家。奈良時代なので8世紀。
d白村江の戦いは663年(無論惨敗で663)で7世紀。日本敗戦→国防強化→内陸(近江京)遷都・防人設置、という流れから、平城京時代よりも前の話であることをイメージしたい。
第5問問3問題文に「1901年に学校を設立」とあり、選択肢文cは「この学校が設立された後で教育勅語」、dは「この学校が設立した後で義務教育期間が4年から6年に延長」となっていて、これらの正誤が問われている問題です。
教育勅語は1890年発布、そして義務教育延長は1907年ですので、正文はdであることがわかります。ここも、丁寧に流れを押さえておきたいところです。教育勅語は帝国憲法の直後。義務教育は、もともと6年以上を計画していたが実情を踏まえて4年とされていたところ、日露戦争の頃にようやく学校が設置されて義務教育も延長された、という感じです。
その次の問4では、問題文に「1907年に『世界婦人』を創刊」とあり、その頃の出来事として新婦人協会の活動、女性の政治集会参加禁止のそれぞれの正誤が問われている問題です。
新婦人協会は1920年に設立され、女性の政治集会参加を訴えていました。このことから正誤判断できます。教科書では日本共産党や全国水平社(いずれも1922)あたりと同じところに書かれている名前です。
時系列の正確な知識が要求されており、年号記憶の必要すら感じさせるレベルです。ただ、大正時代の社会運動は1910~20年代に集中していますので、それで判断したいところです。
それでは対策です。
おそらく医学部受験生が日本史を選択するのは、
高校で履修していたというケースが多いでしょう。クエストでも、歴史選択者はほぼ、高校時代の履修の延長でした。ですので、イチから教科書を読み始めるというよりは、ある程度の基本的知識は頭に入っているうえで復習していく、という学習スタイルになるかと思います。
教科書なり参考書なりを普段から読み、用語問題集やマーク式問題集で定着させる、という流れで大丈夫です。地理や公民のように「判断に迷う微妙な図表」が出題されることは少ないので、
安定して点数が取れるようになります。
あと一つ、医学部受験で日本史選択を選択する上での不利な点は、公民と異なり、
小論文などで社会科の知識を役立てられることが少ないことがあります。他の科目との関連性が薄い科目なんですね。