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医学部受験のためのセンター試験分析2020・化学

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先日行われたセンター試験について、医学部受験生を対象に、問題をチェックしていきます。
まず化学から。2020年の化学は例年通りでした。ただ前年から続いている傾向として、立式がやや複雑になる計算問題や、思考力を問う問題文が一定程度みられます。共通テスト移行を意識したものであるといえそうです。
  
予備校や出版社などが出しているセンター試験講評などは、一般の受験生を対象にしているので、医学部受験者の状況には合っていない事があります。たとえば問題の難易度については、予備校などの講評では「教科書に掲載されていない物質が題材となっている」「溶液の濃度の変化を考慮して計算をしなければならない」などという理由で、「難しい」とされることがあります。
しかし、私大や国立2次を照準において学習を進めている医学部受験生は、その程度の理由でセンター試験問題を難しいとは感じないでしょう。むしろ、難しいと思うのは、私大や国立2次と傾向が異なるようなタイプの問題がセンターで出題されたときであるというのが実感なのではないかと思います。
 
第1問問4。「多くの受験生が苦手とするテーマからの出題」という予備校の講評どおり、気体の問題はなかなか得意になれないかもしれません。
基本は、気液共存の場合には気体分圧は飽和蒸気圧に等しいです。そして、液柱の高さと「760mm」の差が1気圧に相当します。公式的に書けば、1.013×105Pa×(760mm-高さ)/760=内部気体圧力。このあたりがあやふやな医学部受験生が少なくありません。チェックポイントは、「高さ」に760を代入すれば内部気体圧力はゼロ、すなわち真空になること。
 
第2問問5。題材は東大などでも出題されている、指示薬の色の識別の問題です。「2つの刺激があるときに、片方の刺激の量がもう片方の刺激の量の10倍を超えなければ、双方の刺激が干渉しあって、ヒトはこれらを識別できない」という仮定から、指示薬の変色域のpH幅が2になる(つまり100倍)ことを導く問題です(実際はヒトはもう少し敏感に識別できるので、変色域の幅はもっと狭い)。
さらに与えられている数値が指示薬の電離定数なので、そこから変色域数値を求めることになり、難しい印象があるかもしれません。

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慣れてくれば、弱酸なのだからともかくpHは7よりも小さく、中和点でのpH変化が大きい方が判定しやすいというところで正解できますし、さらに言えばアとエのグラフが類似物質の滴定実験(装置位置の上下を入れ替えている)なのでペアだということで即答できます。
 
第6問問1。高分子化合物の正誤問題。細かい知識が問われています。ゴムの種類を丁寧に押さえている医学部受験生はそう多くはないでしょう(ゴムより優先したい化合物がたくさんある)。シス型ゴムとトランス型ゴムの性質の違いを即答できるのは難しいかもしれません。
しかしここは、一般知識でなんとかしたいところです。脂肪酸もそうなのですが、トランス型は直線型で平べったくなり、シス型は折れ曲がって丸まります。平べったい方が分子間力が大きいので、固まりやすいです。つまり、トランスのほうが固いです。
 
第7問問2。糖の加水分解の計算。第6問との選択なので、上の問1を嫌って第7問に流れた受験生も多かったかもしれません。
医学部受験生にとっては易しく、確実に取りたいところです。「デキストリンの繰り返し単位の式量162」なんて問題文には書いていますが、こんなものは覚えておく必要があります(単糖の180-水の18)。「還元性のある糖1molあたりCuO1molが生じる」という記述も同様です。
しかし今回は、繰り返し単位の式量162は直接使いません。二糖に分解されるので、式量は342(180×2-18)だからです。化合物分子量÷単量体式量=重合度、重合度×化合物モル=単量体モル、という一連の高分子計算の流れは、図を書くなりして丁寧に定着させておきたいところです。そして、ここで求められた「単量体モル」が、予備校講評で一致して「正確にミスなく求めたい」と強調されているマルトースの物質量になります。

それでは、対策です。
難しい問題といっても、奇抜なものは出題されておらず、多くは私大医学部でも頻繁に登場している問題です。まずは、私大対策演習が共通テスト対策に直結します。
そのうえで、時間配分や特有のヒネリ方などに慣れるためには、センター試験の過去問を、時間を強く意識して解くとよいでしょう。時間を意識することが大切で、「時間をかけすぎて出した正解に意味はない、むしろ他の問題を解く時間を奪っているので有害」くらいの気持ちを持って取り組むことです。
そうすると自然と、覚えるべき反応式や分子量数値、計算公式などが見えてくると思います。
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