先日行われたセンター試験について、医学部受験生を対象に、問題をチェックしていきます。
今回は物理です。新課程になってから範囲が広くなり、そのぶん素直な問題が増えました。ところがここ1~2年は逆に、少しヒネリが入った問題も見られるようになってきました。特に電磁気分野にそういう問題が見られます。逆に言えば力学や波動では、その手のひねった問題は、"物理基礎"で出題されるかわりに
"物理"では標準的な問題が多く、落とせないところです。
予備校や出版社などが出しているセンター試験講評などは、一般の受験生を対象にしているので、医学部受験者の状況には合っていない事があります。たとえば問題の難易度については、予備校などの講評では「教科書に掲載されていない物質が題材となっている」「溶液の濃度の変化を考慮して計算をしなければならない」などという理由で、「難しい」とされることがあります。
しかし、私大や国立2次を照準において学習を進めている医学部受験生は、その程度の理由でセンター試験問題を難しいとは感じないでしょう。むしろ、難しいと思うのは、私大や国立2次と傾向が異なるようなタイプの問題がセンターで出題されたときであるというのが実感なのではないかと思います。
第1問問2 小問集合の一つで、2本の電流が作る磁力線を選ばせるものです。これが予備校の講評で「教科書に図や写真が記載されていない」としてやや難とされています。かつての旧課程物理Iの小問みたいな感じの問題でしょうか。だとすると、医学部受験者には少々とっつきにくいかもしれません。
選択枝の順に、同方向電流が作る磁力線、逆方向電流が作る磁力線、同極電荷が作る電気力線、異極電荷が作る電気力線です。
電流が流れるとその周りに同心円状の(グルグル巻きの)磁場が発生するというのは中学入試レベルの知識ですが(それが不意に出題されると意外に戸惑う理系受験生もいます)、その磁場の向きを考えて合成するというアプローチで行けばよいでしょう。
第2問A 河合塾は「教科書や問題集に載っていないオリジナル性の高い問題」といい、代ゼミは難易度を「標準」としています。円筒型物体を、導線とコンデンサーの複合体とみなして、等価回路を書く問題です。円筒型物体が電気回路分野では見慣れない形だというのはそのとおりですし、また等価回路に直せれば計算は容易だというのもその通りです。
問1の前にあるリード文で書かれている図が、強いヒントになっていますから、大丈夫だと思います。
第3問A ドップラー効果。代ゼミは難易度を「やや難」としています。しかし典型問題ですから、ここで確実に正解したいところです。水流でのドップラー効果も見覚えがあるようにしたいです。血流の速度を知るために赤血球のドップラー効果を測定する問題も、問題集には掲載されています。
第6問 今年の選択問題は、熱と原子からの選択でした。第6問は原子です。ニホニウムが題材に取り上げられていますが、問題については、質量数とα崩壊回数という標準問題です。亜鉛原子を衝突させるというのは、もしかすると知っていた人がいたかもしれません。もちろん、α崩壊がヘリウム原子核発生であるという知識は、必須です。センター原子では、知識・公式で十分対応できるので、正確に知識を仕入れる勉強が必要です。
対策について。まずは
私大・国立2次用の勉強を丁寧に重ねて、基礎知識の抜けはなくしておくこと。そのうえで、過去問(まずは現行課程の本試験・追試験)を時間内に解く。どこに時間がかかったか、問題を解く時に何を考えてしまったかをチェックして、
自分の傾向を知っていくことです。
磁力線と電気力線の区別で一瞬迷ったというのなら、旧課程過去問を見たり、等電位面を追加して比較したりして、迷わないようにしていきましょう。