先日行われたセンター試験について、医学部受験生を対象に、問題をチェックしていきます。
今回は生物です。分量が多くなりました。
長い文章や多くの図表を読ませて答える問題が多くなっています。単純な考察で解ける問題も多いのですが、思考が要求される問題もみうけられます。
予備校や出版社などが出しているセンター試験講評などは、一般の受験生を対象にしているので、医学部受験者の状況には合っていない事があります。たとえば問題の難易度については、予備校などの講評では「教科書に掲載されていない物質が題材となっている」「溶液の濃度の変化を考慮して計算をしなければならない」などという理由で、「難しい」とされることがあります。
しかし、私大や国立2次を照準において学習を進めている医学部受験生は、その程度の理由でセンター試験問題を難しいとは感じないでしょう。むしろ、難しいと思うのは、私大や国立2次と傾向が異なるようなタイプの問題がセンターで出題されたときであるというのが実感なのではないかと思います。
第2問問2 これは確かに難しいです。正肢文の個数がわからないから消去法が使えません。対照実験を過不足なく選ぶというのは、易しいようで難しいです。問題文の推論は「黒片のみが細胞を筋肉細胞にする」。そして黒片には核がなく赤片にのみ核があるので、胚にするためには赤片が必要です。ここからわかることは、「赤片+黒片で筋肉細胞」。そして必要な対照実験は、「黒以外では細胞を筋肉細胞にしない」。
文(a)は、遺伝子の内容を記述しているが、分化の様子が書かれていないので使わない。
(b)は、赤単独では細胞を筋肉細胞にしないというものなので、対照実験として必要。
(c)は、赤片+黒片で筋肉細胞という本体の実験。必要。
(d)は、赤+茶、赤+白では細胞を筋肉細胞にしないというものなので、対照実験として必要。
(e)は、茶+黒などでは胚にならない。これは核がないから当然であり、(分化の実験としては)不要。
第5問問5 今回の生物の知識問題は、量はすこし増えましたが、教科書的な知識で解けるものが多かったです。その中で、この問5はなかなかシビアです。維管束植物の化石の年代を、ダイレクトに聞いています。1億年前は中生代、6600万年前は新生代であり、その頃になると種子植物が既に出現しているので不正解だというのはわかるのですが、では3億年前か4億年前か、と言われれば、自信をもって答えられないかも知れません。
「この問題の正解を知る方法」は簡単なのですが(図説に載っています)、「この
レベルの問題に正解できるための勉強方法」はどうでしょうか。医学部受験生が、古生代の紀について詳しい知識を身につけるのも簡単ではありません。優先して覚えるべきことがたくさんあります。一方でセンター試験では例年、進化や生態の分野で厳しめの知識問題を出すことがありました。腹をくくって記憶に励みたいところですが、新テストになってこのあたりの傾向がどう変わるかは不明です。
第6問問1 第6問バイオテクノロジーと第7問進化分類が、選択問題です。ところが第6問が全体的に、検討に時間がかかりそうです。しかし医学部受験生の多くは、第6問を選んだでしょうし、正解もできたでしょう。
知識水準はセンター試験に照準を合わせて推論練習すれば、難しくはありません(それでも、フィトクロムとフォトトロピンの区別がつく必要がありますが)。この問題も、問題文に「輸送に関わっている」と書いてありますので、タンパク質の末尾は輸送先を決めるものだということが推測できます。もちろん厳密に考えてしまうと、他の可能性もいろいろ思い浮かんでしまって迷いますが、そのための「センター試験に照準を合わせて推論練習」です。
対策です。まず要求されるのは、医学部受験生にふさわしい正確な知識です。生物学的な知識だけでなく、解法知識といわれるものも必要です。
そして、センターの推論問題に慣れておくこと。これは問題を解くときの思考過程をチェックしておいて、答え合わせの際には「何を思いついてしまったか」「何に惑わされたか」を確認して反省することが大切です。普段の勉強で
「正解して満足」しているだけだと、本番で思わぬ結果になってしまいます。