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医学部受験のためのセンター試験分析2020・倫政

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前回にひきつづき、医学部受験生にとってのセンター試験。
今回は倫理・政経についてです。地理と異なり、読み取りや設定が難しいという問題は少ないですが、単純に「知識が細かい」問題はいくつかみられます。この科目は教科書は平易ですが、科目内容としては分量が多いですから(思想や政策についての細かい話をしだすとキリがありません)、医学部受験生としてはどの程度のところで割り切るかという観点が必要になります。
 
 
第1問 問1はクワインについて出題されました。問題自体は易しいです。ホーリズムという語を知らなくても、パラダイムかホーリズムかと言われれば正解できるでしょう。
あるいは問5では「発展途上国の生産者や労働者に正当で公正な対価を払う」と言われればそれはフェアトレードでありリサイクルではない、というのもすぐに判断できるところです。
しかし、この手の問題で何が聞かれても答えられるように知識を準備する、となると、相当な量の勉強が必要になります。それも、相互関連性が薄い知識項目をたくさん覚えていくという勉強です。ここが、自分がこの科目に向いているかどうかを知る基準になると思います。

第2問問1 日本思想。予備校からは知識がやや細かい問題と評されています。理系科目であれば、知識で押せる問題ならばタップリ知識を用意すればいい、となりますが、(医学部受験生ならばセンターの化学や生物で「知らない知識が出てきた」と言うことがないように知識を押さえていくのは当然)、文系科目ではそこまでの余裕もないので、ツライところです。
「小乗仏教」という言い方は大乗側が相手を批判するために使うものであり、自らは「上座部」と名乗っていること。菩薩とは何かについて宗派ごとの相違があるが「悟りを求める衆生」であること(高僧を指して「○○菩薩」と言う例もあります)。般若経では空概念が説かれていること。上座部が東南アジアで普及したこと。
宗教や交通についてはややマニア的に物を知る、というのは受験社会を攻略する一つのカギになります。
 
第4問問7 行政分野から、地方公共団体についての知識問題。

消去法が使えない問題形式なので、差がつくところです。
Bは易しいです。「監査」という言葉が「行政についてのチェック」という程度の意味であることから、取引との関連性が薄いことはわかるでしょう。
しかしAとCは、ちょっと細かい知識になります。地方の選挙管理委員会が国政選挙の事務も行うというのは、大人なら投票所の様子で何となくわかります(そもそも投票所は市役所や市立学校)。また、国が法律で決めたことを市が実行するときの財源として、「国庫支出」「国庫負担」という言葉はよく聞くでしょう。市が支払ったコロナ特別定額給付金10万円も、財源は国庫支出金です。
しかし高校生がそのあたりの感覚を掴むのは難しいです。
 
第5問問5 経済分野の問題。ODAに関する数値が与えられていて、該当する国を選ぶものです。パーセントで表されているものは、贈与の割合を表しますが、単純な贈与か貸付かの2分ではなく、貸付期間や金利などを考慮して、厳しいか緩やかかを表します。これがグラントエレメント。日本はこれが低め(=貸付の性質が強い)で、批判されることもありますが、日本側は逆に「贈与の性質が強すぎると、受ける側に依存心が生まれて自立・成長を妨げる」と主張しています。
日本のODAといえば他に、軍事的影響力にかわる国際影響力をつけるためのツールであり、市場開発の手段でもあるために、積極的に行われています。一方で、企業の思惑によるいわゆるヒモ付援助になりやすいという指摘があります。
 
 
対策について。満点狙いであれば、時事問題用語や思想詳解について相当な知識が要求されます。しかし医学部受験生がニーチェや朱子学について詳しく学ぶというのも限界があります。同じく分量が多い科目として歴史がありますが、歴史はセンター出題レベルがある程度明確です。その点倫政は、「ここまで覚えれば十分」と言い切れるレベルがそれほど明確ではないかもしれません。
そして、これは毎年書いていることですが、社会的な感覚や知識が極端に足りないと、小論文や面接で手痛い思いをすることになるので、注意が必要です。
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