私大医学部の過去問を見ていきます。
今回は、2021年順天堂大学の化学。
理科2科目120分200点(全科目合計500点)。大問2コ([I]と[II])、[II]のみ記述問題。
前年と比べてちょっと問題量が減りました。コロナ関係の現役生配慮かもしれません。
大問[I]・第2問。気体の状態・熱などのテーマ小問集合。
最後の問4がちょっとイヤらしいです。問題文には「平衡に達したときに」となっていますが、材料の固体結晶をすべてアンモニアにしても、平衡状態のために必要な圧力には達しない、というものです。厳密にいえばこれだと平衡とは言えないのですが、そこは柔軟に対応していいです。
大問[I]・第3問。エステルの構造決定です。
エステルの構造決定であれば高級な知識は不要なのですが、しかし半分パズルみたいな問題で、
練習量がものをいうところです。正直、現役生には手が出なかったかもしれません。
飽和度と炭素数から徐々に絞っていきます。エステル結合がある環状エステルは、加水分解によって飽和度が下がります(環が開く)。そのあたりも考慮して進めていきますが、時間が足りないでしょう。
大問[II]。反応速度と平衡。
こちらの方がはるかに取り組みやすいです。完答も狙えます。
ここで落とすと、ちょっと厳しいでしょう。
あえていえば、最後の問題がやや目新しいです。正反応の反応速度vと逆反応の反応速度v'があり、平衡に達した後で、正反応の材料物質のみを追加投入して、反応速度vとv'の変化をグラフで表す、というものです。
(赤本より掲載)
投入直後は、材料物質が加えられているので濃度が上がり、正反応の反応速度vは大きくなりますが、逆反応から見た材料物質の量は変わらないので、逆反応の反応速度v'は変わりません。反応速度の大小と平衡移動の方向をきちんと区別する必要があります。
そして最終的には、両者の速度は再度一致して新しい平衡状態になります。そのときの速度は、最初の平衡の時点での反応速度よりも大きいです。
(赤本より掲載)
この図が書けるかどうか。
今年の問題の勝負ポイントのひとつです。
それでは
対策です。
例年の順天堂化学と言えば、組み合わせタイプの問題が多くて繁雑であり、計算量も多い、というものでした。見当をパッとつけて計算実行に持ち込むというのが、解答スタイルでした。
今年はけっこう、そのあたりの事情が変わっています。落ち着いて計算すれば、かなりのところまで進めます。
来年以後の流れは不明ですが、
駿台理系標準問題集レベルの問題ができれば十分でしょう。
これも、
時間を強く意識して解いていく必要があります。時間をかけて解けたというのは、解けてないのと同じ、むしろ他の問題を解く時間を奪うので害悪だ、という気持ちです。
また、構造決定にはしっかり慣れておく必要があります。環形がある場合、二重結合にヒドロキシ基がついてエノールになる場合、など、ある程度パターンを押さえておく必要があります。通常の参考書で大丈夫ですが、有機で1冊の問題集を使ってもいいでしょう。