私大医学部の過去問を見ていきます。
今回は、2021年日本大学の前期物理・N方式。
日大は昨年まではA方式(個別)とN方式(全学部共通試験)の2つの日程がありました。A方式の定員が97名、N方式の定員は10名なので、A方式の方がメインでした。
次からは、
N方式のみとなります。全学部共通問題のほかに2次試験で英語・数学が実施されます。理科は全学部共通問題でのみ出題されることになります。
つまり理科では、医学部の独自問題がなく、全学部共通問題のみということになります。
物理についていえば、昨年のN方式は60分間で大問5問。全問マーク式です。
2022年の物理1次試験は、
60分間で実施することが発表されています。他学部と共通の出題ですので、医学部だけの事情で難易度や内容を変更するわけにもいかないですから、N方式の問題の状況が大きく変わることはないと思います。
レベルは標準。普段の勉強では、これよりも難しい問題を数多く解いてきたはずです。ここはひとつも落とせません。
大問5問ですから、まんべんなく出題されているというのも特徴です。力学・波動・電磁気・熱・原子と、全分野から出題されました。
I 力学は大問5問中1問なので、比較的、力学への比重は軽いです。それでも力学は、考え方の枠組みの時点でミスを誘発したり、計算・式変形に非常に時間がかかったりすることもあるので注意が必要です。
(赤本より掲載)
(4)で、小球Aの摩擦力が0のときの円板の角速度が聞かれています。ここで「摩擦力が0」のイメージをしにくいかもしれません。基本的に摩擦力は、物体が動いていたり、物体に何か力がかかっているときに、それらに対抗する力です。ですから、物体が静止していて、かつ物体にかかる力(の接触面平行方向成分)が釣り合っているときには、物体に摩擦力がかからなくなります。
よって、小球Aの摩擦力が0のときというのは、糸の張力と遠心力が釣り合っているときです。
これを、摩擦といえばμmg、と
早合点してしまうと、「摩擦力が0」のイメージをつかみ損ねてしまいます。
(5)では、小球Aの円運動半径を小さくして、小球Aが動かない場合についての問題です。こちらも少しイメージしにくいです。円運動半径が小さくなれば遠心力も小さくなります。すると摩擦力は大きくなります。ここでその摩擦力が最大静止摩擦力より大きくなると、物体は止まることができなくなる、という感じです。
III 力学以外の分野では典型問題が並びます。
「見たことがない設定」というのはまずないと思います。どの問題集にも載っている問題です。IIIは、電磁気のうちコンデンサー回路。回路の形は、コンデンサーC
2がスイッチによって流れる電流の向きが変わるタイプの問題になる形なのですが、問題はそこまで聞かれていません。
最後の(5)は、回路内の帯電したコンデンサーに誘電体を挿入する話です。電場が小さくなるので電位が下がりますが、キルヒホッフの原則により並列区間は等電位になる。そのためにコンデンサー間で電荷が移動して電位を等しくする、という流れです。ここは、コンデンサー回路について定着していないと、試験本番での正確な処理が難しいかもしれません。
対策です。
まずは満遍なく解法知識を押さえることです。広く浅く出題されるわけですから、苦手単元をなくすことが先決です。そのうえで、日大N方式レベルの問題に焦点を合わせて勉強するのは、あまりおすすめできません。他大学との併願も考えると、もう少し難しい問題に取り組むことになると思います。
とくに、
2020年より前の日大N方式物理では、手ごわい問題も多く出題されていました。次の入試でどのレベルの問題が出題されるかは、予想がつきません。過去問は3年分程度やっておきたいです。