私大医学部の過去問を見ていきます。
今回は、2021年日本大学の前期生物・N方式。
日大は昨年まではA方式(個別)とN方式(全学部共通試験)の2つの日程がありました。A方式の定員が97名、N方式の定員は10名なので、A方式の方がメインでした。
次からは、
N方式のみとなります。全学部共通問題のほかに2次試験で英語・数学が実施されます。理科は全学部共通問題でのみ出題されることになります。
つまり理科では、医学部の独自問題がなく、全学部共通問題のみということになります。
生物についていえば、昨年のN方式は60分間で大問7問。全問マーク式です。
2022年の生物1次試験は、
60分間で実施することが発表されています。他学部と共通の出題ですので、医学部だけの事情で難易度や内容を変更するわけにもいかないですから、N方式の問題の状況が大きく変わることはないと思います。
大問7問ですから、まんべんなく出題されており、また問題量も多めです。
I タンパク質の構造と機能に関する問題なのですが、問3では見慣れない回転角度の問題、問4ではタンパク質切断の推理問題。いずれも簡単なパズル的問題なのですが、時間との勝負となります。
(赤本より掲載)
日大N生物は、ジックリ時間をかけるとやがて解けるけれども時間が足りない、という推理問題が多く、それがまた焦りを生み正答率も下がってしまいます。過去問練習で、
簡単なパズル的問題だという相場を身につけて、試験本番で妙な深読みをすることのないようにすることが必要です。
III 免疫の問題ですが、TLRやMHCなどと抗体構造の問題で、レベルは高めです。しかし医学部受験生にとっては、こういう分野でレベルが高い問題の方が、調子が出やすいのではないでしょうか。医学部受験生ならば、
免疫の難問については普段の勉強でたくさん取り組んでいるはずです。
TLRやMHC、TCR、BCRはむしろ、なじみがある語句でしょう。問4ではこれらのうち、マクロファージや好中球が持ち、病原体の糖や核酸などを特異的に認識するタンパク質を聞かれています。医学部受験生ならば即答したい問題です(正解はTLR)。
V 植物の環境応答。名称がノーヒントで出題されています。問2は「イネの花成ホルモンの実体はFTタンパク質である」「シロイヌナズナの花成ホルモンの実体はHd3aタンパク質である」の2つの選択肢文が誤文であり、それぞれのタンパク質の名称が逆です。花成ホルモンは詳しめの参考書にも載っているのですが、これは医学部受験生は手薄になるでしょう。
長日植物(シロイヌナズナ)と短日植物(イネ)が、日長変化を葉で受容してホルモンを分泌して、それが師管を通り花成誘導するという流れですが、取れなくてもいいレベルです。
また、別の所では、個体群密度の上昇により繁殖が容易になる現象を表す用語を選ばせており(正解はアリー効果)、これも難しいです。
対策です。
私大医学部で、他学部と共通の入試問題を解く機会はそう多くはありません。医学部が他学部と傾向がはっきり違う科目は、英語と生物です。特に生物は全学部共通問題のみですので、
他大学とは傾向が違う問題で勝負することになります。植物、進化、生態の比重が大きいので、要注意です。
推理問題の量が多いので、
普段から「短時間でザックリと結論を出す」練習をしておきたいところです。素直な思考パズルが多く出される、と言えば、共通テストも同様です。過去問を練習に使うといいでしょう。
2020年より前の日大N方式生物では、手ごわい問題も多く出題されていました。過去問は3年分程度やっておきたいです。